クラウドファーストとは何か?

クラウドをシステムのプラットフォームとしてたくさんの企業が活用しており、自社でも導入が進んでいることを目にする方もいると思います。今回紹介するクラウドファーストは、その中でも浸透しつつある考え方となります。

1.クラウドファーストの基礎知識

クラウドファーストの基礎知識

「クラウドファーストという言葉自体知らない」という方や「クラウドファーストという言葉自体は知っているが、詳しくは知らない」という方の為に、まずはクラウドファーストの基本的なところから理解していきましょう。

1-1.クラウドファーストとは

クラウドファーストとは、単語の言葉のとおり、企業がクラウドサービスを運用基盤の最優先として検討するアプローチのことです。企業がシステムの導入を検討したり更新を進める際に、これまではオンプレミスファーストが主体でした。つまりシステムを導入するにあたって基本的に自社で必要な設備の管理を行うという考え方が主体でした。それをクラウド優先でシステム開発を目指す考え方に変わっていきます。

1-2.クラウドファーストが注目される理由

クラウドファーストがメディアで広く取り上げられることになったきっかけは「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」が関係しています。政府は2018年6月にこれを発表しましたが、方針の中で「クラウド・バイ・デフォルト原則」を発表しました。これが意味するところは、政府情報システムの整備の中で第一候補として、クラウドサービスの利用を検討するということです。政府がクラウドファーストを推進しているのは、クラウドファーストが技術革新対応力の向上につながるからです。クラウドサービスの場合、技術革新に伴い新機能が登場しても随時追加でき、最新技術の活用や試行錯誤も簡単に進められます。オンプレミスの場合は、クラウドほどフレキシブルに対応できるわけではありません。そのため、政府も推進しているクラウドファーストはDX推進のための大きな原動力になると考えられます。

1-3.類似概念との違い

クラウドファーストと似たような概念があります。クラウドネイティブやクラウドスマートです。クラウドネイティブはシステムのあり方であるのに対し、クラウドファーストは方針です。これら3つの言葉は似てはいるものの違うものです。まず、クラウドファーストはシステムの開発や更新時に最優先でクラウドサービスの導入を検討することです。そしてクラウドスマートはクラウドのメリットを課題に対するソリューションとして最大限活用するような導入の仕方を指します。最後にクラウドネイティブは、クラウドの利点を最大限活用できるように設計されたシステムのことです。つまりクラウドファーストと方針であることは一緒ですが、方向性を意味しているのが異なります。これらの違いを理解した上で、クラウド化を進めていくといいでしょう。

2.クラウドファーストのメリットと注意点

2.クラウドファーストのメリットと注意点

クラウドファーストは、今後の経営方針に対してメリットもありますが、注意点もありますので、メリットデメリットを検討したうえで導入を検討してください。

2-1.クラウドファーストのメリット

オンプレミスを導入する場合は、システム構築に関する費用や運用担当者の人件費、電気料金、別に管理する場所を確保するのであれば家賃もかかります。しかしクラウドであれば初期費用をそんなにかける必要がありません。システム構築のための機器はすべてクラウドサービスの方にお任せできます。つまりオンプレミスと比較すると、コストカット効果がかなり期待できます。またオンプレミスの場合、自社で作ったものは自分たちで管理する必要があります。一方クラウドの場合は、ベンダ側が管理してくれるので自分たちは管理に手間を取られず本業に専念できるのもメリットといえます。

リードタイムが短期間で済むのもメリットの一つです。オンプレミスの場合、大きな基盤システムを導入したり移行したりする場合には数か月単位、規模によっては1年超係る場合もあります。しかしクラウドであれば既存のシステムをそのまま利用する、もしくはカスタマイズする形で運用できるので大幅に期間短縮が期待できます。

2-2.クラウドファーストの注意点

クラウドファーストのメリットをお伝えしましたが、すべてのケースでクラウドファーストがマッチするかというとそうではありません。むしろオンプレミスによる運用の方が向いているケースもあります。たとえばスタンドアロン型のシステムを導入する場合など、オンプレミスの方がおすすめです。高度なセキュリティポリシーがあると、ベンダ側がそれに対応できない恐れがあるからです。その他にも、複雑な演算処理が必要な場合も同様にベンダ側がそのニーズに対応できない恐れがあります。このような場合には自社でニーズに合わせて、オンプレミスを開発する必要が出てきます。

すべてのシステムを同じクラウドサービスに集約するという運用方法もあるでしょう。そうすれば、同じ方法で各システムにアプローチすることができます。しかしこれにもリスクがあるので慎重でなければなりません。特に注意したいのが、クラウドサービス自体に何らかの問題が発生した場合です。システム障害が発生すれば、すべてのシステムにアクセスできなくなって何も作業できなくなる事態も想定されます。

3.クラウドファーストの進め方について解説

いざクラウドファーストを自社で導入しようとした場合、どのように進めればいいのでしょうか。以下で紹介するように下準備を進めておくと、自社にマッチするクラウドサービスの選定をスムーズに行うことができるでしょう。

3-1.現体制の見直し

クラウド導入する前に、自社の現状を把握してみるとよいでしょう。まずどこをデジタルに移行できるのか、検討することができます。現在アナログ処理しているプロセスをデジタルに移行することで、作業効率性をアップさせることができるところがあるかもしれません。ただし何から何まで、すべてデジタル化できるとは限りません。アナログでなければいけない所もありますので、どこをデジタル化できるかその範囲を決めましょう。

3-2.スタッフの確保

クラウド導入するにあたって、その担当者が必要になります。どのくらいの人員が必要になりそうでしょうか。自社で賄えるのか、新たに人員確保しなければならないか、後者の場合人件費をやりくりできるのかシミュレーションする必要があります。もし自社でクラウドスタッフを選定する場合は、担当者としての教育が必要になります。情報共有して徹底させなければ、クラウドを導入しても十分使いこなせずに宝の持ち腐れになりかねません。

3-3.クラウドの選定を進める

クラウド導入が決定して、下準備も進められたらいよいよクラウドの選定です。具体的にどのクラウドを導入するか比較・検討をしてみてください。自社の事情に合わせて選定を進めればいいのですが、例えば比較内容として、暗号化対策などセキュリティ対策がしっかりできているか、サポート体制が充実しているか、いざというときにバックアップが取れるかなどで比較しましょう。また取引先と共有するため、大容量のデータ管理が必要な場合、要領の上限がどうなっているかもチェックしておくとよいでしょう。

4.実際のクラウドファースト導入事例でみる成功のポイント

4.実際のクラウドファースト導入事例でみる成功のポイント

クラウドファーストの考え方はここ日本でも少しずつ浸透してきています。その結果、実際に導入を進める事例も見られます。実際の導入事例をいくつかご紹介しますので、今後の参考にしてみて下さい。

4-1.政府のガバメントクラウド

国は先ほど紹介した方針の中で、クラウドファーストを推進しています。その中の施策の一つがガバメントクラウドです。これまで公的機関のデジタル化の推進の試みがありました。しかし高いセキュリティなど独自の基準がネックになっていてなかなかクラウド化が進みませんでした。そこで登場したのが、ガバメントクラウドです。国や自治体などの公的機関が共通で利用できるセキュリティの基準を満たすクラウドを整備したのです。そうすることで、クラウド導入のハードルが低くなりました。実際自治体では戸籍や税情報の管理をクラウドで行うようになりました。

この例を踏まえて、周辺環境や基準作りなど下準備を進めれば、クラウド導入の障壁を取り除くことができます。クラウドファーストにかじを切るのであれば、下準備を入念に進めることが求められます。

4-2.大手ガス会社の試み

もう一つの例は首都圏を中心にサービス提供している大手ガス会社です。こちらの会社では、2030年まで最大限のクラウド化を進めると表明しました。そのために着手したのが、社内のマインドチェンジです。クラウド化を推し進めるにあたって、実は身内が足を引っ張るパターンが結構あります。「セキュリティは本当に大丈夫?」「余計なコストがかかるのでは?」と漠然とした社内からの声によって、せっかくの試みがうまくいかないことは珍しくありません。そこで社員に対するクラウドの教育にまず力を入れました。正しい知識を身につけることで、未知のサービスに対する漠然とした不安を払しょくできます。

間違った知識や偏見のために、企業の成長機会を逃してしまうのはとてももったいないことです。まず、クラウドを導入する前に、経営陣や技術者たちにどうしてクラウドを導入する必要があるのか、導入することのメリットなどについて勉強会や説明会などを理解の場を設けて理解していただくことがとても大切です。

5.まとめ

クラウドサービスはオンプレミスと比較すると導入コストが安価です。また、システム管理はベンダ側に任せることができので自社の負荷が下がります。その結果、自分たちは本業に専念することができるので、システム開発や移行などはクラウドファーストで検討するのも一つの選択肢ではないでしょうか。ただし、クラウドを最優先と考えたとしても、時と場合によってはオンプレミスの方が管理しやすい、というケースもあります。またいろいろとシミュレーションして、下準備をしておかないと、クラウドを利用しても使い勝手が悪くなってしまうこともあります。自社内で検討を十分に行ったうえでクラウドを導入するのか、導入する場合はどのクラウドを採用すべきか考えることをお薦めします。

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