災害対策としてデータセンターを利用するメリットとは?

データ活用の機会は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透に伴い、増加傾向にあります。自社サーバーの強化はもちろん、データセンターへの移転を決める企業も、自社で大量のデータを扱うにあたり増えています。サーバー性能の強化だけでなく、災害対策としてのデータセンターの活用が注目されています。ここでは、災害対策としてデータセンターを活用するメリットについてご紹介します。

BCP対策の重要性と災害対策について

BCP対策の重要性と災害対策について

BCP(事業継続計画)の一環として注目されている取り組みとして、データセンター導入による災害対策があります。BCP対策の目的には、災害やテロなどの不測の事態が起きても、早期に中核事業を復旧することで損失を最小限に抑えるというものがあります。BCP対策は海外の企業はもちろんのこと、日本国内企業でも実施が進んでいます。なぜBCP対策は必要なのか、その重要性を確かめておきましょう。

災害大国である日本

日本が災害大国であることは、BCP対策が進む大きな理由の一つといえます。どこの国にも、火事や停電といった人災は共通していますが、台風や地震、津波といった自然災害は日本列島に拠点を構えている場合には、他の国々の企業に比べてどうしても被害は大きくなる傾向にあります。

また、最近では、国際テロの標的に日本企業が含まれる可能性もグローバル化の進展に伴い、増加しています。武力への対応能力が、市民レベルで充実しているケースは稀です。ですから、攻撃を受けても最小限の被害に抑えられることや、攻撃が届かない場所でデータを管理することの重要性が高まっています。

増加するサイバー犯罪

BCP対策について、必ず考えるのはサイバーセキュリティの問題です。物理的な攻撃だけでなく、インターネットを媒介するサイバー攻撃の脅威は、近年、高まっています。日本企業もまた、数々のサイバー攻撃の標的となってきました。

サイバー攻撃を想定したバックアップを確保できているケースは、バックアップサーバーをすでに用意しているという企業であっても少なく、バックアップごとデータを、サイバー攻撃を受けた際には失ってしまうという被害事例も散見されています。

そのような事態にも対応するために、新たにサイバー犯罪も想定した、新しいバックアップ環境の整備が、BCP対策においては求められています。

データセンターの役割について

データセンターの役割について

データセンターは、上記のようなBCP対策の徹底をサポートする施設として、注目を集めています。データを管理するためのサーバーを安全に保管するための施設がデータセンターです。そこでは、あらゆる脅威を回避するための設備が充実しています。

データセンターは主に三種類の運用方法があります。以下に、それぞれの役割について紹介します。

ハウジング

データセンターないに用意されているサーバー設置用のラックを借りることができるサービスをハウジングといいます。自社サーバーをすでに所有している場合には、データセンターのラックを借りることにより、サーバーの管理が安全に行えるようになります。

遠隔によるサーバーメンテナンスはもちろんのこと、サーバーの管理をデータセンターに委託できる場合もあります。

ホスティング

すでにデータセンター内に設置されているサーバーを借りて運用するためのサービスをホスティングといいます。自社サーバーを所有していない場合や、運用を停止する予定がある場合に、活用できるサービスで、丸ごとサーバーの維持管理をデータセンター側に委託することができます。

クラウド

インターネット経由でデータセンター内のサーバーをライセンス契約することで利用できるサービスをクラウドといいます。自社でサーバーの構築を担う必要がなく、サーバーの利用を、契約してすぐに開始できるため、非常に便利なサービスといえます。

サーバーを自社で所有しておらず、さらにサーバーをカスタマイズする必要がないならば、軽コストでもあるクラウド利用が便利です。

災害対策にデータセンターを活用するメリット

災害対策にデータセンターを活用するメリット

施設そのものの耐災害性がデータセンターは非常に高くなっており、BCP対策に最適なサービスを提供しています。サーバーがただまとめて保管されているだけではありません。

サーバーを会社とは異なる場所で管理できる

データセンターは、そもそもオフィスがある場所とは全く関係のないところに設けられているので、もし、会社が何らかの被害に遭ってもサーバーは無傷であることがほとんどです。

例えばオフィスビルが地震によって倒壊したとしても、地震が発生した場所とは遠く離れた地域にデータセンターは設置されているので、地震の影響でサーバーが被害を受けることはありません。
事業を会社の被害とは関係なく守ることができるのが、データセンター活用のメリットといえます。

優れた地震対策

耐震性に優れた施設としてのデータセンターが増えています。免震装置が導入されたラックによってサーバーの破損を防いだり、耐震フレームなどを建物そのものに採用したりして、最小限に地震被害を抑える仕組みが備わっています。

オフィスで中途半端にサーバーを管理するよりも、被害を受けるリスクは非常に小さいといえます。

充実している防火設備

地震だけでなく、防火設備にも優れているのがデータセンターの強みです。施設の構造として火の手が上がらないようになっていることはもちろん、もし火災が発生しても、水ではなく、消火ガスを使い、水没によるサーバーの故障を回避します。

データセンターの場所は非公開

データセンターの場所は公にされていません。そのため、誰かが不用意に侵入できないようになっている点は強みといえます。どこのデータセンターを、どのクライアントが利用しているか、という情報も非公開であるため、物理的な特定の企業を狙った攻撃も回避できます。

高度なセキュリティが施されているデータセンター内

最新のデータセンターを利用するメリットとして、施設内にアクセスするために何重にも設計されているセキュリティを解除しなければならないなどの高度な不法侵入対策が挙げられます。データセンターの場所を、たとえ特定したとしても、内部に第三者が侵入することを回避し、施設内を24時間体制で監視することにより、不審者の特定を容易にします。

データセンターを災害対策として導入した事例

データセンターを災害対策として導入した事例

すでに、データセンターの導入を災害対策を踏まえて進める事例も現れつつあります。どのような組織が運用しているのか、下記に紹介します。

保険会社

自社のBCP対策を、東日本大震災の影響で見直すことになったある保険会社では、防災性に優れるデータセンターの導入も災害対策用のオフィスの設置に合わせ、進めました。導入することにしたものは、総床面積6,000㎡を超える関西地区有数の大規模データセンターでした。特徴はそれだけでなく、神戸層群を支持層とした丘陵地に位置していることから地震や津波のリスクが小さいため、データセンターの安全性も高いので、事業の継続性を高めることに成功しています。

参考:https://www.netxdc.com/case/case04.html

ソフトウェア開発会社

東日本大震災を契機としたサーバー管理の見直しと、データセンターの導入が、あるソフトウェア開発会社でも進みました。各ホテルのシステムと大手宿泊予約サイトとをつなぐパッケージの提供を進める同社では、津波や地震のリスクが大きい東北にクライアントの多くがあることを懸念し、比較的リスクの小さい沖縄のデータセンターに移転を決めています。

運営が沖縄電力グループの下でなされているデータセンターということもあり、万が一の電源対策への充実が選定の決め手となっています。

参考:https://www.firstriding.co.jp/case/detail?id=631

ITシステム開発会社

データセンターへの移転は大手ITシステム開発会社においても、すすんでいます。大手企業のシステムの開発と管理を任されている同社では、万が一データが喪失した場合、その被害は計り知れないものになることが予想できます。そのため、自然災害のリスクが小さいとされる四国地域にデータセンター設置をしました。加えて、豊富な電源確保の手段や優れた免震構造が用意されている施設を選び、最小限に被害リスクを抑えられる仕組みづくりを進めました。

参考:https://www.stnet.co.jp/business/dc/powerico/example/ibm_01.html

まとめ

企業のBCP対策に、災害大国でもある日本では、注目が集まります。データセンターの活用は、対策方法の一つとして非常に有益であり、導入企業には多くのメリットがあると期待できます。データセンターを災害対策目的で選ぶ際には、免震構造や立地、電源設備などに注目しながら選び決めていくと良いでしょう。