SD-WANでトラフィックを最適化、そのメリットとは？導入事例を併せて解説

SD-WANでトラフィックを最適化、そのメリット・事例を解説

昨今、デジタル活用や会社の多拠点化が進む中で多くの企業が検討し、実践しているもののひとつにSD-WANの導入があります。社内でネットワークを一元管理できる体制を整えることによって、コスト削減やセキュリティ強化などの効果が期待できます。

これから実際の導入事例を参考にしながら、SD-WANの導入によって具体的にどんな成果が得られるのかを解説していくので、是非参考にしてください。

「SD-WAN」について

[SD-WAN]について

「SD-WAN」とは、「Software-defined Wide Area Network」の略称であり、社内WANを一元管理するためのシステムのことです。拠点ごとに物理的なルーターを設置する必要がないので、一箇所のハードウェアを経由し仮想ネットワークを構築して、全ての拠点のWANをまとめて管理することができます。

機器を使ってネットワークを維持するのではないため、ソフトを使って保守管理を行い、従来よりも便利かつ安心して利用できる環境へと移行できるメリットがあります。

「SD-WAN」の導入が進められている理由とは？

[SD-WAN]が求められる理由とは

多くの企業でSD-WANの導入が進められている理由として、次の3つが挙げられます。

クラウド活用による業務のデジタル化
働き方改革やグローバル化などによる多拠点企業の登場
有益な人材の不足

それではこの3点をひとつずつ詳しく解説していきます。

①クラウド活用による業務のデジタル化

1つ目の理由として挙げられるのが、業務のデジタル化です。新たに導入したITツールを活用して業務の多くを遂行することによって、生産性の向上や効率の改善が見込まれますが、その中でも注目を集めているのが[クラウドサービス]です。

インターネットを経由して利用できるクラウドサービスは、オンプレミスのソフトと変わらない性能を持ちつつ、導入のしやすさや初期費用が安価であることなどから、大企業はもちろん中小企業でも導入するところが増えています。

クラウドサービス利用するうえで注意しなければいけないのは、ユーザーは必ずインターネットに接続していなければならないということですが、SD-WANを導入すれば、回線負担を過度に心配することなく運用が可能です。

②働き方改革やグローバル化などによる多拠点企業の登場

2つ目の理由は、働き方改革による影響があります。多くの企業でリモートワークやフレックス出社などの制度が採用されており、これらの制度を実施するには業務遂行を円滑にするための体制づくりが必要です。

SD-WANを導入することで、他の拠点でも本社と同様のネット環境が実現し、安心安全な業務環境を利用ができます。また、日本からグローバル市場への参入を検討している企業も増えていますが、このように海外に拠点を設置が必要となったときでも、SD-WANを活用して拠点機能を充実することによって、現地まで保守管理のために人材を派遣する必要がないので活用しやすいのも利点です。

③有益な人材の不足

最後に３つめの理由ですが、深刻な人材不足が問題となっています。多くの拠点を有する企業の場合では、各拠点の保守管理のためのエンジニアを複数人確保しなければなりませんが、国内全体で人材不足が進んでおり、このように保守人材を確保することが困難になっており問題になっています。企業の収益には直結しない業務でもあるため、できる限りコストをかけずにこういった業務をこなしたいと多くの企業では考えています。

SD-WANを導入するメリット

これまでいくつかの課題を解説してきましたが、このような課題を解決するのに、SD-WANの導入が大きな成果が期待されています。

次は、SD-WANを導入するメリットを4点にまとめて解説していくので、確認しておきましょう。

①インターネットブレイクアウトの実現

SD-WANを導入する最大のメリットは、なんといってもインターネットブレイクアウトの実現です。

インターネットブレイクアウトとは、特定のクラウドサービスに対してインターネットを介さず、直接アクセスができる仕組みのことです。

自社で利用しているクラウドへの直通回線を開けるので、インターネットを経由するよりも高速かつ安定した環境で利用できるメリットがあります。

②ネットワーク管理の効率化

SD-WANを導入することによって、本社から社内のネットワーク管理をまとめて行えるようになるのでとても効率が良くなるメリットがあります。これまでは各拠点ごとの管理が必要だったところを一元化するため、拠点数が多く対応に困っていた組織にとってはありがたい機能だと人気があります。

③保守管理コストの削減

現場へ担当者を派遣したり常駐させネットワーク構築や維持管理を行う必要がなくなるので、保守管理にかかる人件費のコスト削減が期待できます。

保守管理が全く不要というわけではないのですが、これまでとは違い、本社に最小限の人員を配置するだけでよくなるため、人件費が圧迫していた企業にとっては嬉しいメリットではないでしょうか。

④セキュリティの強化

SD-WAN経由でのネットを利用するので、公共のインターネットへアクセスする機会が減るので、不正アクセスや情報流出のリスクを小さく抑えられる特徴があります。

万が一、なんらかのトラブルが発生したとしても、現場に赴く必要はなく、一箇所からトラブルの特定と解消に勤めるだけで良くなるので、迅速かつ的確に対応できることもポイントです。

SD-WANを導入した事例を紹介

それでは、実際にSD-WANを導入したらどうなるかを解説していきます。いくつか国内企業でSD-WANを導入した事例をご紹介します。

【マスメディア企業】株式会社朝日新聞社

SD-WANの導入によってクラウドサービスの活用に伴うネットワーク負担の軽減に成功した代表として、マスメディア企業である朝日新聞社があります。

動画コンテンツの利用が拡大することでクラウドサービスの導入に伴い、社内からインターネットへの出口の混雑が発生するようになったことから、トラフィックの集中を回避する必要があったため、SD-WANの導入を検討しました。

朝日新聞社が調査した結果、70%の社員がSD-WANを導入したことでネットワークパフォーマンスの向上に納得していると回答しており、現場にとって必要な改善結果が得られたことがわかったのです。また、SD-WAN導入に伴いルーターの冗長性も向上し、ネットワークの耐障害性においても改善が見られるなどの効果もありました。

（参考：https://www.nissho-ele.co.jp/product/cisco_sdwan/casestudy/asahi-shimbun）

【メーカー企業】三星ダイヤモンド工業株式会社

国内外の工場を結ぶWAN環境を構築することで、現場に依拠しないICT環境のフラット化に成功したのは、メーカー企業の三星ダイヤモンド工業です。

こちらの企業は、早期から事業のグローバル化を推進してきたのですが、通信コストが問題となっていました。海外工場を含めるとその通信コストは高止まりしているため、どうにかして費用の削減に努めることを目的として、ICT環境を整備して事業の継続性を確保したうえで、グローバル事業に安定感をもたらすことが課題とされていました。

SD-WANを導入することで、拠点間の通信費や機器の保守費、減価償却費などの運用コストを67％も削減することに成功し、このような課題解決に役立ちました。また、リアルタイムで接続状況や帯域を可視化できる仕組みを整備したことによって、運用管理に伴う負担軽減もおおいに効果を発揮しました。

（参考：https://juku-jp.vmware.com/casestudy/mitsuboshidiamond/）

【食品メーカー】マルコメ株式会社

テレワーク導入に伴うトラフィックの増加に対応するため、SD-WANの導入を実現した会社が、食品メーカーのマルコメです。

Web会議システムを使った日々の業務に伴う余計なトラフィック負担の軽減を進めつつ、SD-WANのインターネットブレイクアウト機能を利用することによって、東西で異なっていたネットワークの統合も併せて進めていくことにより、保守運用を最適化することができました。最適化により、社内におけるクラウドサービス利用の更なる推進が進み、クラウドによる工場管理の実践などの新しい効率化プロジェクトも次々と展開されるなど、良い影響を与えました。

（参考：https://business.ntt-east.co.jp/case/2022/n002/）

SD-WANを導入する前に検討しておくポイント

多くのメリットを企業にもたらしてくれることから期待値の高い施策であると言えるSD-WAN導入ですが、最後にSD-WAN導入する前に検討しておくべきポイントを２つにまとめたので、導入を検討した際は確認してください。

①SD-WAN導入することで解決したい課題を挙げる

まず1つ目に紹介するポイントは、導入によって解消したい課題の洗い出すことです。SD-WANは導入するだけで課題が無条件に解決できるものではなく、特定の課題に対して効果を発揮するシステムです。

SD-WANの特性を事前に調べてよく理解し、解決したい問題に対応できるかどうか、導入を決める前に一度洗い出すことが重要です。

②SD-WANを導入することで実現したい新しい取り組みを洗い出す

次に紹介するポイントは、SD-WANを導入することでどのような施策ができるかを考えることです。クラウドサービスを導入したり、社内システムの刷新など、SD-WANによって解決したい課題に対応するだけでなく、さらにどのようなチャレンジにつながるかも考えて進めることで、SD-WANのメリットを最大限に活用することが大切です。