大企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実施が進む一方で、中小企業におけるDXは遅々として進んでいないのが現状です。国内企業の過半数が中小企業を占める日本においては、中小企業でのDXが進まなければ、真の変革を期待することはできないでしょう。
今回は、なぜDXが中小企業で進まないのかの理由に触れつつ、中小企業でもDXを推進するためのポイントについて、ご紹介します。
中小企業のDX状況
2021年の10月に行なった中小企業向けの調査によると、74%の中小企業が「DXを知らない」と回答していることが明らかになりました。DXを実践している企業はわずか9.6%にとどまり、早急の対処が求められるところです。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000030.000050033.html
とはいえ、日本の中小企業はDXをしたくないというわけではないことも同調査では明らかになっています。DXを知らない事業所のうち、43.1%がDXに興味を示しており、37.2%が「進むと思う」と予想するなど、正しいアプローチの認知が進めばDXは今よりもスムーズに進むと考えられます。
中小企業でDXが進まない理由
そもそも中小企業でDXが進まない理由として、どのような点が挙げられるのでしょうか。
DXの認知が進んでいない
中小企業でのDXが進まない最大の理由は、そもそもDXの認知が進んでいないことが挙げられます。上記でご紹介した調査結果からも分かる通り、DXを知らないと回答している企業は中小企業の7割を超えています。
DXとはそもそも何なのか、DXでどのような課題を解決できるのかなど、多くの疑問を解決できないためDXに踏み切れないのはもちろんのこと、DXというソリューションの存在を知らないため、DXが進まないというケースもあるでしょう。
そのため、DXを中小企業の間で広めていくためには、まずDXという施策の認知拡大を各社で進めていかなければなりません。また、DXへの理解は企業のIT担当者だけでなく、決裁者や経営者といった層の人間が理解を示す必要もあります。
DX人材が不足している
2つ目の理由は、人材不足です。DXは広く導入が可能とはいえ、ある程度DXに対する知見を持った人材がいなければ、何から始めていいのかがわからず、推進力を得られません。 また、DX人材は昨今のDX需要の拡大とは裏腹に、市場にDXヘ知見のある人材が少なく、まだまだ不足が続いています。DX人材を確保するためには相応の人件費も発生するため、そこに予算を出せる企業でなければ、DXを推進するのは難しいというケースもあるでしょう。
現状維持に固執している
3つ目の理由は現状維持を優先したいという意識です。現状、事業が傾いておらず、特段大きな問題がないとなると、テコ入れのモチベーションは下がります。むしろ、余計な現状変更によって組織に混乱を生じることを過度に恐れるようになってしまうため、DXのような新規性のある取り組みは嫌われる傾向にあります。
DXが効果を発揮するためにはある程度の時間が必要となるため、余裕のあるうちから実施できるのが理想です。
予算が確保できない
DXはデジタル技術の導入によって業務を効率化する取り組みであるため、ある程度の初期費用は発生します。
大企業に比べて人材と予算が限定的である中小企業にとって、成功するかどうかがわからず、初期投資もかかるDXはリスクが大きいと考えられ、十分な予算が確保されないケースも見られます。
最近では中小企業向けのリーズナブルなソリューションも数多く登場しているため、自社の規模に見合ったシステム導入の検討を進めましょう。
中小企業がDXで解消すべき課題
先ほど挙げたような理由からDXに踏み切れない企業は少なくありませんが、DXの実践によって、実際には多くのリターンが期待できます。
人材不足
DXによって得られるメリットの一つが、人材不足です。多くの人手を必要とする作業労働を、DXによってまとめて効率化・自動化することで、必要な人手の母数を減らし、人材不足の解消につながります。
既存人材もより高度な技術を必要とする現場へ配置し、働きがいのある業務を与えられます。
業務効率化
2つ目は業務効率化です。紙の資料を参考にしなくとも、一括管理されたデータベースから必要資料をすぐに見つけ出すことができたり、日報作成をテンプレート化し、簡単な数値入力だけで報告を終えられたりといった効率化を実現できます。
働き方改革
これまで従来型のオフィスワークに囚われていた企業も、DXによって先進的な働き方を実現可能です。Web会議ツールやチャットツールの導入によって、オフィスだけでなく自宅からでも働ける環境を整備したり、スマホから勤怠管理ができたりといったオンライン環境を整えられます。
リモートで全国から就業できる環境が整えば、多様な人材の確保や定着率の改善も期待できるでしょう。
課題解決につながるDX施策とは
DXは、企業が抱える以下のような課題解決に貢献します。主な例を見ていきましょう。
ペーパーレス化
代表的な施策の一つに、ペーパーレス化が挙げられます。紙媒体の資料を全て電子化したデータベースに保管するだけでなく、契約書のやりとりや作成なども電子媒体で行えるため、紙や印刷機のコスト削減、及び郵送負担の削減につながります。
作業の自動化
作業労働の自動化は、DXの醍醐味とも言える施策です。データ入力や書類作成、経費申請などのバックオフィス業務は、システムに落とし込むことで自動化、あるいは半自動化し、担当者の圧倒的な負担削減につながります。
データ活用
情報のデジタル化を進めることで、企業に眠っているデータを資産として積極的に活用できます。
顧客情報や営業リストをスコア化して見込みの高い営業先を割り出したり、売上分析を自動で行い、高度な意思決定にも通用するような質の高い情報を手に入れたりすることができます。
中小企業がDXを実現するためのポイント
中小企業がDXを円滑に進める上では、以下のポイントを押さえて実行することが重要になるでしょう。
全社的なDX認知を拡大する
まずは、全社的なDX認知を高めるところから始めるのが大切です。DXがなぜ必要なのか、どんな恩恵をもたらすのかを周知することで、DXへの期待や理解を深め、導入の機運を高めることが求められます。
経営者層の積極的なコミットを促す
2つ目に、経営者への積極的なコミットの促進です。DXは全社的な取り組みでなければ効果が期待できないため、経営者が主体となって施策を推進しなければなりません。
長期的に見ればDXの実施は不可避であるため、経営者への説得を粘り強く行い、DXに向けて予算と時間を割いてもらえるようコミュニケーションを取りましょう。
自社課題の洗い出しを進める
DXの効果を実感するためには、自社の課題に最適なDX施策を実現しなければなりません。まずは自社でどのような課題を抱えているのか、どうすれば企業を更なる成長へ繋げられるのか、課題解決にはどんなDXソリューションが有効なのか、一度検討してみる時間を確保しましょう。
まとめ
DXには時間と予算もかかるため、中小企業は中々手が出せないと考えられていますが、実際には中小企業にとって大いにメリットのある取り組みです。最近ではコストパフォーマンスに優れるサービスも登場し、IT導入補助金などの行政サービスも充実しつつあるため、そのハードルは非常に低くなってきました。
自社の課題を洗い出した上で、どのような施策であれば実施可能なのかを検討してみましょう。