【効率的に進めるために】社内業務のシステム化で失敗しない6つの手順

システム化は、自社の業務効率化や生産性向上を実現するために、避けては通れない道です。ただし、計画を立てずに進めたり、ベンダーに言われるがままシステムを導入したりしてもうまくはいきません。

システム化を進める際は、正しいステップを理解して、主体的に取り組む姿勢が大切です。

そこでこの記事では、システム化を効果的に進めるための6つの手順を解説。はじめて取り組む方でも分かりやすいように説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。

システム化の意味・定義

そもそも「システム化」とは、広義においては「誰がおこなっても同じアウトプットを出せる仕組みや手法」のことを指します。狭義では、「既存の業務をITシステムによる運用に置き換えること」を意味します。

前者は、必ずしもITシステムを用いる必要がないのに対して、後者は、はじめからITシステムを活用することを念頭において進めるのが特徴です。

ただし、現代では財務から営業、生産、販売にいたるまで、あらゆる業務を効率化するための業務システムが市場に出回っています。そのため、単に「システム化」というと、「ITシステムの導入」を意味して使われることが多いようです。

そこでこの記事では、「システム化」を狭義の「ITシステムの導入」と定義し、実際に進めるための手順を解説いたします。

システム化を進める6つの手順

システム化を進める6つの手順

自社でシステム化を実施する際は、以下の6つの手順を踏むと効果的に進められます。

  1. 目的の明確化
  2. 業務と課題の洗い出し
  3. システム化をする業務範囲の決定
  4. システムの選定・検討
  5. 製品の導入・運用開始
  6. 定期的なチェック・改善

以下では、各ステップの詳細を解説いたします。

1.目的の明確化

まず、社内でシステム化をおこなう目的を明確にしましょう。単に「上司から指示されたから」「社内で改革の気運が高まってきたから」といったあいまいな理由ではなく、システム化を実現して何を達成したいかを具体的にイメージすることが重要です。

たとえば、以下の目的が挙げられます。

  • 社内のDX促進
  • 社員のITリテラシーの向上
  • 業務効率化による生産性の向上
  • 働き方改革の実現
  • 業務標準化による属人性の排除

たとえば、「業務効率化による生産性の向上」が目的であるのなら、重視すべきは「労働時間の削減」です。ここの前提がしっかりとしていれば、システム選定で何を重視すればいいのかが明確になりますし、運用開始後のKPIが定まりやすくなります。後のステップで、手戻りや再検討など無駄なプロセスを発生させないように、しっかりと決めましょう。

また、経営層もしくはプロジェクトの推進リーダーが、システム化の目的を社内のメンバーへ共有することがポイントです。目的が共有されないままプロジェクトが進むと、社員間での認識がバラバラになり、違う方向へ逸れてしまったり部署間で対立が起こってしまったりする恐れがあります。

2.業務と課題の洗い出し

次に、システム化の対象となる業務をひと通り洗い出します。社内のすべての業務を洗い出すと多大な時間がかかってしまうので、事前に明確化した目的に沿って、ある程度候補を絞っておくのがポイントです。

業務と課題の洗い出し

業務を洗い出す際は「業務棚卸表」を作成し、体系的に把握しましょう。たとえば、Excelなどの表計算ソフトを用いて以下のような業務棚卸表を作成します。

3.システム化をする業務範囲の決定

業務棚卸表をもとにシステム化すべき業務が見えてきたら、次に、システム化の対象となる業務範囲を決定します。一連の業務フローのなかで、どこまでをシステムが担い、どこからを人手で対応するのかを明確にしましょう。

そこで、業務の一連の流れを理解するのに役立つのが「業務フロー図」です。具体的には線や図形を用いてフローチャートを作成し、それぞれのタスクや処理のつながりを可視化します。

以下の画像は、国際標準である「BPMN(ビジネスモデリング表記法)」を用いた業務フロー図のイメージです。

BPMNを用いた業務フロー図では、フロー線やイベント図形、アクティビティ図形などを用い、一定のルールのもとで業務の流れを可視化します。習得するのに高度な知識は必要なく、一度覚えれば誰でも簡単に作成可能です。

たとえば、受注管理業務をシステム化したいのであれば、見積書の作成→契約締結→注文情報の登録→在庫確認・出荷といった一連の流れを、フロー図を作成して可視化します。受注管理システムを導入することで、フロー図のなかのどこからどこまでの範囲をシステム化できるのかを検討しましょう。システムにより簡素化できる箇所や、どうしても人手が必要な箇所が見つかるはずです。

4.システムの選定・検討

続いて、システム選定のステップへ移ります。具体的には、以下の流れで進めましょう。

  1. 要求定義
  2. ベンダーのリストアップ・絞り込み
  3. 導入製品の決定

以下では、各手順の詳細を詳しく解説いたします。

4-1.要求定義

要求定義とは、発注者がシステムに求める機能や性能などの仕様を明記し、要求を具体化する作業のことです。要求定義をおこなうことで、自社が抱いている期待が明確になるため、後の製品選定をスムーズに進められるようになります。

最初のステップとして、5W1Hを明確にしましょう。

Why(導入目的):最初のステップで決めた導入目的です。なぜシステムを導入することになったのか、背景を記載します。

What(業務内容・範囲):どの業務をシステム化したいのか、具体的な範囲を明記します。

Where(導入・運用場所): リモート環境下やオフィスなど、具体的にどの場所で導入や運用を進めるのかを記載します。

Who(導入・運用担当者):誰が導入や運用に責任をもって進めるのか、実際にシステムを利用するのは誰なのかを記載します。

When(納期):システムの運用開始までに想定している導入期間です。

How(予算):システム導入にどれくらいの予算が出せるのか、具体的な金額を記載します。

5W1Hが明確になったら、現状で求める機能の概要をリストアップして記載します。たとえば、以下のような内容を決めておくのがおすすめです。

システム化で必要な機能:CSVによるアップロード機能、アラート機能、帳票作成機能など、自社業務のシステム化に欠かせない機能です。

自社に必要のない機能:自社の業務で採用すると、オーバースペックになってしまう機能です。

ハードウェア構成:サーバー・ネットワーク・エッジデバイスなど、対象業務を遂行するために使用するハードウェアの構成です。

ソフトウェア構成:OS・アプリケーションなど、対象業務を遂行するために使用するソフトウェア構成です。

要求仕様書を作成する際は、発注者側・ベンダー側の双方が理解できるよう、誰が読んでも分かりやすい内容を意識しましょう。ときには、業務フロー図や画像を添付して、視覚的に伝えることが重要かもしれません。最終的に、候補ベンダーによる提案やシステム導入がスムーズに進むことをイメージしながら作成してみてください。

4-2.ベンダーのリストアップ・絞り込み

次に、自社の機能要求を満たせる製品を探し、エクセルなどへリストアップします。リストアップの方法として、以下が挙げられます。

  • 会社の製品ホームページに記載の機能や事例を確かめる
  • 業界雑誌を購入し、製品の詳細な性能を調査する
  • 資料請求や電話問い合わせをして、ベンダーへ直接聞く
  • リアル・オンライン展示会へ参加して担当者の話を聞く

リストアップの段階では、10社以上などできるだけ多く候補を挙げるようにしましょう。反応があったベンダーのうち、自社の求める機能要件や予算感、対応業界・業務がより近しい数社へ絞り込み、最終選定へと移ります。

4-3.導入製品の決定

最後に、RFP(提案依頼書)を候補ベンダーへ送付し、自社の求める要件や理想をベンダーへ伝えます。RFPはシステム導入の際によく用いられる書類で、課題や解決イメージ、機能要求・非機能要求といった項目を記載するのが特徴です。

前のステップで作成した要求定義書が具体的であれば、ブラッシュアップしたものを送付してもよいですし、別に資料を新規で作成するなどして、より伝わりやすい内容を目指してもよいでしょう。

その後、各ベンダーから提示される提案書を確認し、評価を実施します。具体的には、予算や納期、信頼性など多角的な評価軸を設け、スコアリングをして定量的に評価します。場合によっては、個別面談やプレゼンテーションの場を設けて直接話を聞いてみるのも一つの手です。

最終的に発注先となるベンダーを決定し、今後の導入スケジュールを調整します。

5.製品の導入・運用開始

製品の選定・契約後、策定したスケジュールに沿って導入プロジェクトを推進していきます。

ここで気を付けるべきは、「システムに合わせて業務を変更するのか」「業務に合わせてシステムを変更するのか」といった視点です。

導入製品をカスタマイズしないのであれば、基本的にシステムに合わせて業務内容を変更する形になります。カスタマイズが不要なので費用が安く済んだり、業務ルールの策定が容易になったりするのがメリットである反面、業務設計の柔軟性に乏しいのがデメリットです。

もし製品をカスタマイズするのであれば、費用はかさみますが、自社で理想とする業務フローを設計できるのが魅力。用意する予算や運用開始後の業務フローをイメージしながら、適したやり方を選択しましょう。

6.定期的なチェック・改善

運用がはじまったら、それでシステム化が成功したとはいえません。当初で定めた目的が達成されたかどうかを定期的にチェックする必要があります。

そのためには、KPIを設定して目標の達成度合いを数値で管理するのがおすすめです。

たとえば、システム化の目標が「労働時間の削減」だとすると、KPIとして考えられるのは「担当者の労働時間」になります。システム化をする前と後で、労働時間が増えているのか減っているのかを測定し比較すれば、効果が見えてくるでしょう。

もし当初想定していたKPIの数値に達しないのであれば、原因を究明します。「システムを導入したばかりで、担当者が操作に慣れていない」「ベンダー選定を間違えて想定以上のランニングコストがかかっている」「そもそもの目的設定が間違っていた」など、さまざまな理由が考えられるので、社内でしっかりと話し合う姿勢が大切です。

システム化で失敗しないポイント

システム化をする際は、変更後の業務マニュアルを作成・共有するのがポイントです。なぜならシステムを導入しただけでは、現場の担当者が使い方や進め方を理解できないからです。

具体的には、業務の目的や関係者、システムの操作方法を明記した手順書を用意します。作業者がマニュアルを理解しやすいよう、冒頭で目次を設けたり、ステップごとに見出しを付けたり、キャプチャ画像を用意したりするなどの工夫が必要です。右も左も分からない新入社員が読んでも、理解できるくらいの分かりやすさを目指してみてください。

作成方法は、WordやExcel、PowerPointといったソフトを使い、PDF出力をして社内の共有フォルダへ保存するのが一般的です。

システム化は、正しい手順で進めることが大切

この記事では、システム化を進める具体的な手順と、失敗しないためのポイントについてご紹介いたしました。まとめると、以下の手順を踏むと効果的に進められます。

とくに「目的の明確化」については、すべてのステップの成功にかかわってくるので、重点的に取り組むようにしましょう。ぜひこの記事を参考に、自社でシステム化を進めてみてください。

超上流工程の進め方