業務のシステム化を実現するには、システム化計画の策定が必要です。やみくもにシステム化を進めても、システム化のメリットを得ることはできません。目的を明確にしたうえで必要なシステムを選定し、適切な形で導入しましょう。ここでは、システム化計画の進め方を紹介するとともに、成功のコツや注意点などについて詳しく解説します。
システム化計画とは
システム化計画とは、情報システムによって業務をシステム化する際に策定する計画のことです。システム化する業務の決定、システム化のメリットを得られる情報システムの選定、開発・導入の進め方の決定など、基本方針を作成します。
システム化の計画を立てる必要性
計画を立てずにシステム化を進めるケースでは、中間管理職や役員クラスの独断でシステム化を決めることになります。現場の声を聞かずに課題を抽出し、課題解決方針を検討する場合、本当に効果が出るシステムを選ぶことができません。仮に、課題解決が期待できるシステムを導入したとしても、従業員が使いこなせなければ、返って業務効率や生産性が低下するでしょう。
そのため、関係者を巻き込みつつ、現状の把握や課題の抽出などを順序立てて進めていく必要があります。システムの導入にはコストがかかるため、無駄なコストを消耗しないためにも、堅実なシステム化計画を立てましょう。
システム化計画の進め方
システム化計画は、進め方を誤ると計画が頓挫する場合もあるため、基本の進め方を守ることが大切です。計画の進め方について詳しく見ていきましょう。
1. 現状の把握と課題の抽出
システム化計画を策定するには、現状の把握が先決です。システム化する業務を選定するには、業務の課題を抽出し、システム化の可否、システム化のメリットなどを把握しなければなりません。複数の業務を同時にシステム化すると、導入コストや作業リソースの関係でコア業務に影響が及ぶリスクがあるため、複数の業務をシステム化する場合は優先順位を決めましょう。
2. 課題解決方針の検討
抽出した課題を元に、どのようなシステムが必要か検討します。そもそもシステム化で解決できるのか、社内規定や運用ルールなどの解決も必要かどうかなどを評価しましょう。さらに、課題の解決によって期待できる効果を可能であれば金額で評価します。難しい場合は、「大・中・小」、「高・中・低」といったレベルで分類してください。
システム化の効果が高いと思われる課題の解決策から検討します。システム部門を含めた関係者でディスカッションを行い、計画の詳細を話し合うことが重要です。関係者を巻き込まずに進めると、後の工程で大きなトラブルが生じ、計画が白紙に戻る恐れがあります。
3. 問題解決に繋がるシステムの選定
どのようなシステムを導入すれば課題を解決できるのかを考えます。コミュニケーションを活性化したいときは、チャットツールやグループウェア、顧客管理を効率化したい場合はCRM、営業担当者の生産性や業務効率を向上させたい場合はSFAなど、目的に合ったシステムを選定しましょう。
システムを選定する際は、提供企業の信頼性、導入実績、使いやすさ、必要なITリテラシーのレベル、料金、サポート体制などをチェックしてください。どれだけ高機能でも、現場の従業員が使いこなせないシステムは、システム化の目的を果たすことができません。返って業務効率が低下するリスクもあります。
システムによってはトライアルで導入できるものもありますが、機能が制限されていることが一般的です。トライアルの必要性も含めて、導入するシステムを選定しましょう。
4. 導入
システムの選定後、導入に移行します。既存パッケージを利用する場合、所定の方法でダウンロード・インストールなどを行います。全く何もない状態からシステムを構築する場合は、開発部門と連携しつつ開発を進めていきます。もしくは、開発会社に外注しましょう。いずれの場合も、仕様書通りのシステムに仕上がるように緻密な連携が欠かせません。
5. 運用
システムを実際に運用します。運用を開始する前に運用ルールを定めておくと、現場が混乱せずに済むでしょう。また、部分的にシステムを利用し、大部分をアナログで進めてしまうと、かえって業務が煩雑になります。さらに、従業員によってシステムの利用頻度が異なる場合は、従業員同士の連携に支障をきたします。
システムの利用方法がわからない場合は、周りの人がサポートする体制を構築しておきましょう。また、定期的に使い方講座を開催し、全従業員が可能な限り同じレベルでシステムを使えるように導くことが重要です。
6. 評価・改善
システム化による効果を測定します。また、従業員からの使いやすさや導入効果などの評判を確認しましょう。システム化したものの予想以上に効果が低い、導入・維持のコストと比べると割に合わないといった場合は、以前の運用に戻すことも検討してみてください。
評価で判明した問題点を踏まえ、運用ルールを見直します。また、より効果が高く、使いやすくなるようにシステムをカスタマイズするのも1つの方法です。このように、評価と改善を繰り返すことで導入の効果が高まるでしょう。
システム化計画を進める際のポイント
システム化計画を進める際は、さまざまな点に注意が必要です。1つ間違えると、効果が低いシステムを選んでしまったり、システム化すべき業務を見誤ったりする恐れがあります。システム化計画を進める際のポイントについて詳しく見ていきましょう。
実行可能な計画を立てる
理想を優先して計画を立てても、途中で頓挫するリスクが高まります。例えば、多機能なシステムを導入し、1ヶ月で生産性を40%アップするといった目標は、現実的ではありません。事前準備と従業員のモチベーション次第では可能かもしれませんが、それを継続することは困難です。システム化計画を立てる際は、実行可能かどうかを多角的に分析しましょう。
スケジュールを細かく決める
スケジュールがあいまいだと、コア業務にリソースを多く割くことでシステム化がなかなか進まない恐れがあります。かと言って過密すぎるスケジュールだと、コア業務に支障をきたすでしょう。また、従業員満足度が低下し、生産性や業務効率に悪影響を及ぼしかねません。そのため、現場の負担を考慮しつつ、スケジュールを適切に立てることが重要です。
事例から導入のメリットを確認する
システム化計画を検討する際は、事例から導入のメリットを確認しましょう。導入を検討しているシステムの提供会社は、導入事例を公開している場合があります。自社と似た状況の企業の導入事例があれば、すみずみまで確認してみてください。導入前に懸念していたこと、導入後の効果、現場の声、改善すべき点などの情報を得ることで、システム化のメリットをイメージしやすくなります。また、あらかじめ起こり得る問題を把握できることで、リスク対策にも役立てられます。
検討時に知っておきたいシステム化のリスク要因
システム化計画を立案する前に、システム化のリスク要因を知っておくことが大切です。リスク要因を把握することで、システム化計画を立てる際の注意点が見えてくるでしょう。次のようなリスク要因があることを覚えておいてください。
専門知識のある人物が一定数必要
システムの管理や運用の専門知識を持つ人物が複数人必要です。1人の従業員がシステムの導入を牽引する場合、その従業員が退職してしまうとシステムの運用に影響が及ぶ恐れがあります。そのため、専門知識のある人物は複数人いることが望ましいでしょう。
システムのダウンで業務が滞るリスク
業務をシステム化すると、システムダウンの際に業務を遂行できなくなる恐れがあります。例えば、システムで顧客情報を管理していた場合、必要なときに顧客情報を検索できなくなり、サポートに遅れが生じるケースが考えられます。このような問題は企業の信頼を損ねる恐れがあるため、十分な対策が必要です。
システム化の計画を進める際は、システムダウンのリスクを懸念事項として議題に挙げて、対策法を決めておきましょう。
不正アクセスのリスク
Web上に保管したデータは、外部からアクセスされるリスクを伴います。紙の資料も持ち出しによる流出のリスクがありますが、犯人を絞り込むことは難しくありません。不正アクセスの場合、専門家でも犯人を絞り込むことが難しく、仮にIPアドレスをたどれたとしても流出を食い止めることは困難です。そのため、不正アクセスのリスクがあることは事前に知っておきたい懸念事項と言えます。
まとめ
システム化を検討する際は、いきなり導入するシステムを選定するのではなく、システム化を進める業務の選定、課題の抽出、課題解決方針の検討など、順序良く進めることが重要です。業務内容や課題、求める効果などに応じてベストなシステムが異なります。関係者間でディスカッションを行い、堅実で高い効果が期待できるシステム化を目指しましょう。