【やりきる業務改革シリーズ①】業務改革は「始める前の整理」で差がつく。プロジェクト開始前に確認したい6つの視点

業務改革コンサルタント:株式会社サン・プラニング・システムズ 広田
業務改革・業務改善プロジェクトの支援を担当。
業務を棚卸し、プロセス可視化、問題分析、課題設定、改善施策の検討など、現状把握から改善活動につなげるための実務支援に携わっている。

業務改革や業務可視化に取り組む際、「まずは業務フローを作成しよう」「現場にヒアリングをしよう」といった作業から始めるケースは少なくありません。業務の流れを図にすることや、現場の声を聞くことは、現状を把握するうえで重要な工程です。

しかし、プロジェクトの目的や対象範囲、推進体制が曖昧なまま作業に入ってしまうと、途中で関係者の認識がずれたり、確認すべき内容が散らばったりすることがあります。その結果、業務フローは作成したものの、問題分析や課題設定、施策の検討につながりにくくなることもあります。

業務改革は、単に業務フローや資料を作成する活動ではありません。現状を把握し、問題を整理し、課題を設定し、施策を検討していく一連のプロジェクトです。だからこそ、業務フローを作成する前に、まずプロジェクトとしての前提をそろえておくことが重要です。

本コラムでは、業務改革プロジェクトを始める前に確認しておきたい6つの視点を解説します。

1. 目的・背景を明確にする 

業務改革の目的は、企業や部門によって異なります。業務のムダを減らしたい場合もあれば、属人化している作業を標準化したい場合もあります。システム刷新に向けて現状業務を整理したい、部門間の業務分担を見直したい、業務の全体像を関係者で共有したいというケースもあります。

ここで重要なのは、「業務を可視化すること」自体を目的にしないことです。業務フローを作成することが目的になってしまうと、見た目の整った資料は完成しても、その後の問題分析や改善活動につながりにくくなります。

一方で、最初に目的や背景が明確になっていれば、現場ヒアリングで何を確認すべきかが見えやすくなります。業務フローにどの情報を含めるべきかも判断しやすくなり、関係者間で「何のためにこの業務を見直すのか」を共有しながら進めることができます。

特に業務改革では、現場部門、管理部門、情報システム部門、責任者など、立場の異なる関係者が関わることが多くあります。立場が違えば、期待する成果も異なります。だからこそ、プロジェクトの初期段階で、背景・目的・ゴールを言語化しておくことが欠かせません。

2. どこまでを業務改革の対象として把握するかを決める 

目的が見えてきたら、次に確認したいのが対象範囲です。業務は部門やシステムをまたいでつながっているため、最初からすべてを対象にしようとすると、プロジェクトの焦点がぼやけやすくなります。

当初は特定の業務を見直す予定だったにもかかわらず、ヒアリングを進めるうちに関連業務や周辺システムの話が次々に出てきて、想定以上に対象が広がってしまうことがあります。その結果、プロジェクト期間が延びたり、関係者が増えたりして、当初の目的から離れてしまうこともあります。

大切なのは、業務改革のプロジェクトでどこまでを詳細に把握するのかを決めることです。全体像を押さえたうえで、どの業務領域から詳しく確認するのか、どの部門や工程を中心に見るのかを整理しておくと、ヒアリングや業務フロー作成の焦点が定まりやすくなります。

また、すべてを一度に整理しようとするのではなく、必要に応じて段階的に範囲を広げていく考え方も有効です。まずはプロジェクトの目的に対して重要な範囲を定め、その範囲で現状把握と問題整理を進めることで、取り組みを現実的に進めやすくなります。

対象範囲を決めることは、単に「見る範囲を狭める」ことではありません。限られた期間と体制の中で、何を優先して深掘りするのかを明確にすることです。ここが整理されていると、関係者にもプロジェクトの進め方を説明しやすくなります。

3. 推進体制と役割を整理する 

対象範囲が決まっても、誰がどの役割を担うのかが曖昧なままでは、プロジェクトはスムーズに進みません。業務改革は、担当者一人だけで完結できるものではなく、現場の実態を知る人、全体を管理する人、意思決定を行う人、システム面を確認する人など、複数の関係者が関わる取り組みです。

現場担当者は、実際の業務内容や困りごとを把握しているため、業務棚卸やヒアリング、業務フロー確認に欠かせない存在です。一方で、現場だけで進めると、日常業務が優先され、プロジェクトが後回しになることもあります。

推進事務局は進行管理や資料の取りまとめを担いますが、現場の実態を十分に確認しないまま進めると、現実とずれた整理になる可能性があります。また、業務改革の内容によっては、情報システム部門や管理部門、責任者の関与も必要になります。

誰が確認し、誰が承認し、誰が最終的に判断するのかを明確にしておかないと、レビューや改善方針の検討で『立ち往生』することになります。

推進体制を整理することは、単に担当者を決めることではありません。関係者がどのタイミングで関わり、どのような役割を担うのかを明確にすることです。ここを事前にそろえておくことで、後続の確認や合意形成が進めやすくなります。

4. 進め方とスケジュールを見える化する 

業務改革プロジェクトでは、複数の工程を段階的に進めていく必要があります。プロジェクトの発足後、業務棚卸を行い、プロセスを可視化し、問題を分析し、課題を設定し、施策を検討していく。こうした流れをあらかじめ共有しておかないと、関係者が『次に何をすべきか』で戸惑い、足並みが揃わなくなります。

ここで重要なのは、スケジュールを単なる作業日程として捉えないことです。業務改革におけるスケジュールは、関係者の確認や判断のタイミングをそろえるためのものでもあります。

たとえば、業務フローを作成した後には、現場担当者による確認が必要です。問題を整理した後には、関係者と認識を合わせる必要があります。課題や施策を検討する段階では、責任者や関係部門の判断が必要になる場合もあります。

こうした確認や承認のタイミングを予定に組み込んでおかないと、作業自体は進んでいても、意思決定の段階で停滞してしまいます。関係者が多いプロジェクトほど、確認や調整に時間がかかります。だからこそ、開始前の段階で大まかな進め方と確認ポイントを共有しておくことが、手戻りや遅延の防止につながります。

スケジュールを見える化しておくことで、関係者は「いつ、何を確認すればよいのか」を把握しやすくなります。プロジェクトを前に進めるためには、作業の流れだけでなく、判断の流れも設計しておくことが重要です。

5. 成果物・アウトプットのイメージをそろえる 

業務改革プロジェクトでは、最終的にどのような成果物を作るのかを事前に共有しておくことも必要です。業務一覧、業務フロー、問題一覧、課題整理表、改善施策案など、プロジェクトの目的によって必要なアウトプットは変わります。

成果物のイメージが曖昧なまま進めると、業務フローをどの粒度で作るべきか、問題点をどこまで整理すべきか、改善策をどのレベルまで具体化すべきかが判断しづらくなります。その結果、作成者によって資料の粒度がばらついたり、関係者が期待していた内容と異なる成果物になったりすることがあります。

また、同じ業務フローであっても、利用する人によって必要な情報は異なります。現場担当者が使う場合は、作業手順や判断条件が重要になります。管理者が使う場合は、役割分担や課題箇所が見えることが重要です。システム検討に活用する場合は、使用システムや帳票、データの入出力情報が必要になることもあります。

つまり、成果物は「何を作るか」だけでなく、「誰が、何のために使うか」まで含めて考える必要があります。開始前にこのイメージをそろえておくことで、プロジェクトのアウトプットが活用されやすくなります。

業務改革では、成果物を作ることがゴールではありません。作成した成果物をもとに、関係者が現状を理解し、問題を共有し、次の改善につなげられる状態を作ることが重要です。

6. 関係者の認識合わせと調整事項を確認する 

業務改革プロジェクトでは、関係者ごとに立場や優先事項が異なります。現場部門は日々の業務負荷を気にしているかもしれません。管理部門は標準化やルールの整備を重視しているかもしれません。情報システム部門は、システム要件やデータ連携、運用面の影響を確認したいと考えているかもしれません。

このように関心が異なる関係者が関わるからこそ、開始前に認識を合わせておくことが大切です。何を目的に進めるのか、どこまでを対象にするのか、どのような成果物を作るのか、どのタイミングで確認するのかを共有しておくことで、プロジェクト開始後のすれ違いを減らすことができます。

また、あらかじめ懸念点や調整事項を確認しておくことも重要です。現場ヒアリングの時間を確保できるか、関係部門の協力が得られるか、成果物のレビュー体制が整っているか。こうした点を事前に確認しておくことで、必要な説明や体制づくりを先回りして行うことができます。

業務改革は、正しい進め方を知っているだけでは進みません。関係者が同じ前提に立ち、協力できる状態を作ることも、プロジェクト設計の一部です。

開始前の認識合わせができていると、プロジェクトの途中で意見が分かれた場合にも、最初に共有した目的や範囲に立ち戻ることができます。これは、業務改革を継続的に前へ進めるうえで大切な土台になります。

まとめ:開始前の確認項目を、チェックリストで整理する 

ここまで見てきたように、業務改革プロジェクトを成果につなげるためには、業務フロー作成やヒアリングに入る前の整理が重要です。目的や対象範囲、推進体制、スケジュール、成果物、関係者の認識合わせが曖昧なままでは、プロジェクトが進むほど認識のズレが大きくなってしまうことがあります。

もちろん、プロジェクトは進めながら軌道修正することもできます。しかし、開始前の整理が不足していると、ヒアリングのやり直しや成果物の修正、関係者間の再調整が発生しやすくなります。結果として、当初想定していた以上に時間と工数がかかってしまうこともあります。

そこで、プロジェクト開始前に確認しておきたい項目を整理できる「業務改革プロジェクト開始前チェックリスト」をご用意しました。

このチェックリストは、業務改革や業務可視化を始める前に、関係者間で確認すべきポイントを整理するための資料です。プロジェクト立ち上げ前の準備、キックオフ前の確認、関係者との認識合わせに活用できます。

業務棚卸やプロセス可視化に入る前に、まずは自社のプロジェクトで確認すべき項目がそろっているかをチェックしてみてください。

業務改革を始める前に、確認すべき項目を整理しませんか?  

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